※本記事はハウジングKomachi Vol.32(2021/6/25発行)の巻頭特集『子育て世代が立てた家』掲載記事です。
小さな水路に沿って佇むI邸。
ガルバリウムと杉を組み合わせた印象的な外観が、それなりの時を経た住宅街に新たな景色をもたらしている。
ご夫婦が購入した土地は、奥様の実家にほど近い、中古住宅付きの120坪。
それを更地にして半分を売却し、もう半分にこの住まいを新築した。
味わいのあるポーチの洗い出しは、玄関の広い土間まで続いている。
開放的な眺めはさらに、放たれた引き戸の先にあるLDKへ。
その一部は吹き抜けによって2階と繋がり、大きなワンルーム感覚の住空間を形成する。
どこにいても幼いお子様たちの気配を感じられる大らかさ。それを心地よさと共に実現したのが、高気密・高断熱への強いこだわりである。
「性能についてはとことん勉強しました。内側だけでなく外側の壁も付加断熱し、全体を分厚い断熱の壁で覆う形に」とご主人。
その結果、ずっと望んでいた“冬でも安定して暖かな家”を床下エアコン1台で実現できた。
奥様もにこやかに話す。「子どもたちはお風呂上がりでもしばらく裸んぼのまま。これまでのように『早く着なさい』とか『開けたら閉めて』と小言を言わずにいられます」。
本棚には、ご主人の書物が並ぶ。建築にまつわる書物に貼られた付箋の数々が、家づくりへの熱心な姿勢を物語る。
インテリアの主導権は奥様に。
「メーカーのいいとこどり」と話す造作キッチンは、自社大工を持つビルダーと細かくディスカッションしながら自分仕様を実現した。
また、自然素材の多用も特徴である。
1階の床は足触りのいいスギを考えていたものの、お子様のミニカー遊びを見越して硬く丈夫なナラ材に。
「AEP塗装の壁も、そのときごとの陰影を映す質感が気に入ったと同時に、子どもが汚したら塗ればいいと割り切ることのできる安心感も決め手になりました」と奥様は笑う。
ラグを敷かず、自然の風合いをじかに感じながら、低く暮らす。
求めるライフスタイルを基準にディテールを選びとったからこそ、住まいには快い統一感が生まれている。
とはいえ、ご夫婦は今のあり様に固執しない。
「子どもが小さいのは今だけ。彼らが巣立ったらダイニングテーブルを置いてもいいし、将来は和室を寝室にして1階で生活を完結させるのもいい」。
なるほど、変化に応えるフレキシブル性は、豊かな暮らしを支える根本なのかもしれない。
日差しを和らげる土庇と緑の芝生もI邸の象徴である。
コロナ禍でもお子様が存分に体を動かし、大好きな屋外ランチにわくわくできたのは、この庭があればこそ。
今日も緩やかに街並みへと開き、元気な声を伝えている。
【DATA】
新潟市 I邸
延床面積 113.00m²(34.20坪)
1F 63.30m²(19.20坪) 2F 49.70m²(15.00坪)
家族構成/夫婦+子ども2人
竣工/2018年12月
構造/木造軸組工法
(取材時期:2021年4月)
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