※本記事はハウジングこまちVol.35(2022/12/25発行)の巻頭特集『趣味を楽しむ家』掲載記事です。
趣味に没頭できる空間を、自らの手で造り込む楽しさ
家具職人のご主人が小学生の頃にハマっていたというミニ四駆。大人になって再び始めたのは10年程前だったという。
「ミニ四駆が衰退していた時期があったんですが、2012年に全国規模の大会が復活して、それを機にまたやり始めたんです」。そんなご主人の趣味室には幅3.6mの大きな作業机があり、壁の有孔ボードにはたくさんのパーツが吊り下げられている。
天井近くの棚には100以上のミニ四駆の箱が詰め込まれていて、その様子はまるで専門店のようだ。
「県内はもちろん、東京や北陸、東北などで開かれる各地の大会にも参加していました。県外の場合は妻も一緒に行き、大会が終わった後は旅行を楽しんで帰るんですよ」とご主人。
10畳の趣味室にはミニ四駆だけでなくラジコンカーも飾られている。「最近はミニ四駆よりもラジコンを作っていることが多いですね」。さまざまなパーツを組み合わせ、塗装を施し、オリジナルの1台をつくる。それがミニ四駆やラジコンの面白さなのだという。
家を建てる前は賃貸マンション暮らしで、寝室の一角を作業場にしていた。そのため、専用の趣味室は、新築計画において外すことができない空間となった。
「ミニ四駆のコースの設置もするので、本当はもっと広くしたかったんです。でも妻と建築士さんの2人に反対されました」とご主人は笑う。室内の机や棚はご主人が造作したもので、今後も改良を加えていくのだとか。
「部屋を見てるだけでうれしい気持ちになる。この空間全体が僕にとっておもちゃのような存在ですね」。
コレクターの心を満たす、造作家具と建築の融合
奥様の興味は昔からインテリアや器、雑誌や音楽などにあり、それらを収集するのも好きなのだそう。例えば、リビングの本棚には随分前から定期購読をしている建築雑誌やライフスタイル誌が並んでおり、中には2000年頃のバックナンバーもある。
「僕も妻も収集癖があり、お気に入りのものをしまうのではなく、眺めながら暮らしたいと思っていたんです。住宅よりもお店のような考え方ですね。それで、住宅だけでなく店舗設計の実績も多い建築士さんに家づくりをお願いすることにしました」とご主人。
そうして完成したのが、ワンルームのように大らかにつくられた2階リビングだ。L字型の平面でDKとリビングが緩やかに分かれており、どちらも大きなバルコニーに面している。
随所に見られるユニークな造作家具の発想は、さまざまな情報に触れるのが好きな奥様によるもので、ご主人がそれを形にしていった。例えば、リビングの壁一面の本棚は、かつて東京にあったブックホテルの意匠をオマージュしたもので、ダイニングの大きな食器棚はヨーロッパのシャツケースをモチーフにしたものだという。
住宅街の中でプライバシーがしっかり確保された家は、外界から隔絶された安住の地と呼ぶのにふさわしい。「新築を機に持ち物を一新する人が多いと思いますが、私たちはマンションの時のまま。ずっと前から住んでいたような気持ちで暮らし始めました」と奥様。
本屋のような器店のような、ホビーショップのような家。それは、建築と造作家具が見事に絡み合うことで生まれている。
【DATA】
新潟市 K邸
家族構成/夫婦
延床面積 110.33㎡(33.31坪)
1F 55.68㎡(16.81坪)
2F 54.65㎡(16.50坪)
竣工/2020年6月
構造/木造軸組工法
(取材時期:2022年10月)
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