※本記事はハウジングこまちVol.30(2020/6/25発行)の巻頭特集『自然と、つながる』掲載記事です。
新発田市中心部から車で20分。近景には田園、その奥には里山、さらに奥には残雪を抱いた飯豊連峰が屏風のように広がる。そんなのどかな土地にI邸は佇んでいる。
車2台分のガレージがビルトインされた大きな建物は、レッドシダーと塗り壁仕上げ。
家の周りには落葉樹が植えられ、重厚でありながら親しみやすさを感じさせる。
結婚と同時に新居を考え始めたというIさんご夫婦。ご主人が以前から家具を購入していたインテリアショップがあり、その店のオーナーから紹介を受けた設計事務所に依頼を決めた。
「テーマは『木、ガラス、緑』。そして、自然が眺められる家にしたいと考えていました。そのイメージを共有できる方だと分かり、お願いしようと思ったんです」とご主人。
当初は中庭を囲む1階中心の家を希望していたが、最初のプレゼンテーションで、1階に中庭ではなく土間空間を設け、2階にリビングを配したプランの提案も受けた。
想像を超えた案に魅力を感じたIさんご夫婦は、2階リビング案に決めたという。
1階はタイル張りの土間を中心に、玄関、ガレージ、個室などがレイアウトされており、正面には木塀でプライバシーが確保された庭が広がる。
「プロのセンスに任せようと思いました」と、ご主人は庭師に全てを委ねたという。
完成したのは、石と苔と樹木が組み合わせられた立体的な苔庭。傍らの大きな水盤には水がたたえられ、モミジが涼しげな影を落とす。この凛とした庭の風景がゲストを迎えてくれる。
そこから階段を上がり2階へ進むと、土間の真上にあるLDKにたどり着く。
目の前のダイナミックに連なる大窓越しに、奥行き感のある景色がパッと広がった。
床は濃い色味が特徴的なチークのヘリンボーン。造作家具や建具はチークの突板仕上げ、天井には外へと伸びていくようにレッドシダーが張られている。
「朝起きて、ブラインドを開けた時に見る景色が特に気持ちいいですね」と奥様。
ご主人は、機能と意匠が過不足なくまとまったものが好きだという。
リビングから見えないように内部に調理家電が隠された作業台や、建具で目隠しできるキッチンなどは、ご主人の感覚にフィットした合理的な設計だ。
キッチンの建具を閉じれば質感豊かな一枚の壁ができ、さらにミニマルな空間が完成する。
そんなLDKに、イームズのシェルチェアや、イサムノグチのコーヒーテーブル、フランク・ロイド・ライトの照明タリアセン2などの名作家具が調和する。家具と空間の色味やトーンが揃っているからこそ、風景が一層鮮やかに感じられる。
取材に訪れたのは4月下旬。桜の時期が終わり、里山の木々がキラキラと黄緑色に輝く新緑期を迎えていた。
春の新緑に、夏の万緑、秋の紅葉に、冬の雪景色。Iさんご夫婦の暮らしは、さまざまな表情を見せる自然風景と共にある。
【DATA】
新発田市 I邸
家族構成/夫婦+子ども1人
延床面積 202.62m²(61.29坪)
1F 115.67m²(34.99坪)
2F 86.95m²(26.30坪)
竣工年月/2019年12月
構造/木造軸組工法
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