住み手の自由度いっぱいの、徹底したシンプル&ラフな家

住み手の自由度いっぱいの、徹底したシンプル&ラフな家


あえて作り込まない注文住宅

「工事途中みたいなジャンルの家があっても面白いんじゃないかと思って」

そう話すのは、新潟市江南区天野にある有限会社昭設計(あきせっけい)の渡辺さん。渡辺さんがこの2年間に手掛けた住宅はすべて「サンカクノイエ」という、シンプルな三角屋根の家。現在もサンカクノイエ6、7が進行中です。

渡辺さんが理想とするのは、奇抜なデザインや形状を避けて徹底的にシンプルなカタチの家にすること。形状をシンプルにすることで、構造や気密断熱などの性能を合理的に高められ、住んでからの間取りの変更もしやすくなります。そして、内装には構造用合板やOSB合板などの素材を使い、まるで工事途中のようなラフな状態で引き渡しを行います。

「お施主さんが住んでから好きにカスタマイズできるように、あえてラフに仕上げています。壁に合板を使えば後から自分でネジを打って棚などを造作することができますしね(笑)」(渡辺さん)。

さらに、「シンプルにすることで性能を維持しながらコストを抑えることができます。誰にでも受け入れられるものではありませんが、『手頃な価格で満足度の高い家に住みたい』というニーズに合った、ひとつの形であると考えています」(渡辺さん)。

そんなコンセプトが詰まった最初の「サンカクノイエ」は、2年前に完成した渡辺さんの自邸兼モデルハウスです。

 

シンプルさを徹底したサンカクノイエ1

白い横張りのガルバリウムと、同じく横張りにした無垢材というシンプルで印象的な外観の渡辺邸。

1階の半分は事務所スペースですが、渡辺さんの趣味の釣り道具や自転車、スケートボードなどが置かれた遊び心があふれる空間です。その奥には天井も壁もベニヤで仕上げたシンプルな寝室が配されています。

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すっきりとした外観。2階の大きな窓が特徴的。

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玄関に入るとフラットな土間スペースが。趣味と仕事が混じり合った、渡辺さんの人柄があふれる事務所。

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ベニヤ板で仕上げられた寝室。廉価な素材だが上品さを感じさせる。

眺めのいい2階には、リビングと子ども部屋。高天井にしているため、三角形のシンプルな形が内側にいても感じられます。壁の一部には合板を張り、ダイニングテーブルも合板に鉄製の脚を付けただけのラフなものを使っています。

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三角屋根が感じられるシンプルな2階リビング。壁一面が合板で仕上げられている。

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右奥に見えるダイニングテーブルは、鉄の脚と合板を組み合わせたもの。

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窓は少なめだが、2つの天窓で明るい。

渡辺さんの住宅の価値観が隅々にまで表れた自邸兼モデルハウスは、同じように「徹底的にシンプルでラフな家をつくり、カスタマイズしながら楽しく暮らしたい」と考えるお客さんにとって、深く突き刺さるものがあるようです。

渡辺さんが提案する住宅は、たくさんの可能性の中で理想を追求していく通常の注文住宅とは根本的に考え方が異なります。むしろ、シンプルな形が前提のため、ある程度の制限の中で家づくりが始まります。その考えに共感をした人が渡辺さんに依頼をするため、完成する住宅もやはり「サンカクノイエ」。設計者側と建て主側の双方の感覚が非常に近いために、早い段階でイメージの共有が図れるそうです。

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ダイニングの隅には、渡辺さんが余った合板で作ったワインラックが。

 

ニッチだからこそ、強い共感が生まれる

実際に渡辺さんが手掛けたお宅にお邪魔しました。お施主さんはご夫婦で暮らす30代の北川さん。

「はじめ渡辺さんのモデルハウスの写真をチラシの小さな広告記事で見て行ってみたんですが、合板を仕上げにしたラフな雰囲気や、渡辺さんの価値観が自分たちの理想とバチーンと合ったのを感じて」と話す北川さんご夫婦。「家づくりを依頼してからも、毎回雑談をして盛り上がって、あまり打ち合わせらしい打ち合わせはしなかったですね。大枠を決めてから、まず基礎を作らないことには建物が建たないので、内装の詳細は詰めずに工事をスタートしました」(北川さんご夫婦)。毎回の雑談でしっかりと感覚が共有できていたからこそ、細かな打ち合わせをしなくても安心してお互いに進めることができたと言います。

そして、 週末ごとに現場に来て、空間のイメージを詰めながら造作家具の位置や素材などを詰めていったそうです。

完成したのは杉足場板のフローリングに、構造用合板の壁やDIYで塗った壁。造作の棚も合板でつくられ、ガレージのようなラフな雰囲気を感じさせます。

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渡辺さん邸と同じデザインを踏襲した北川さんのお宅。

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建物中央のロフトへ上がる階段の先には三角形が見える。

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ダイニングより6畳もの広さを持つセミクローズドタイプのキッチンを眺める。

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飲食店の厨房のようなゆったりとしたキッチン。

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キッチン内の作業台や棚も合板で作られている。

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寝室の扉は廃材を集めて作られたもの。

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寝室の天井はパテ跡が残る石膏ボードをむき出しに。

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中古の足場板とコンクリートブロックを組み合わせたテレビ台。カーテンは奥様がお気に入りの布をミシンで仕立てたもの。

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洗面台の鏡も廃材を利用して作った。

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リビングの床は杉の足場板をネジで留めている。「厚さがあるので冬とても温かいんですよ」(ご主人)。

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リビングとダイニングを仕切るロフトへの階段は、ディスプレー棚としても活躍。

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ペンダントライトの位置を柔軟に変えられるように、梁に鉄筋を差し込んでいる。

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1階の玄関ホール。壁の仕上げにはざらざらとした無骨な無垢材を使った。

「北川さんのお宅は来るたびに良くなっていくんですよ」と渡辺さん。シンプルでラフな家は、その合理性はもちろんのこと、住み手の強いコミットメントが生まれることも大きなメリットと言えます。自分たちが強く関与した家だからこそ、その後も積極的に家との関わりを楽しんでいけるのだと思います。

また、そんな北川さんの紹介で、同じ感覚を持つ新たなお客さんを紹介してもらうことも少なくないそうです。

 

「工事途中みたいなジャンルの家があっても面白いんじゃないかと思って」と話していた渡辺さん。

「サンカクノイエ1」が完成してから2年。共感の輪は少しずつ広がり、「サンカクノイエ」シリーズは着実に増えています。

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渡辺さん(右)と北川さんご夫婦。住宅会社と依頼者ではなく、同じプロジェクトを楽しむ仲間という方がふさわしい関係性を築いている。

取材協力: 有限会社昭設計、北川様

(写真・文: ハウジングこまち編集部 鈴木亮平)

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