中古マンション×DIYで実現した、家族の新しい暮らし方

中古マンション×DIYで実現した、家族の新しい暮らし方


リーズナブルに購入できる築古マンション

持ち家では、マンションよりも一戸建の比率が圧倒的に高い新潟県。総務省の平成25年の「住宅・土地統計調査」では、新潟県の持ち家の96%が一戸建で、マンションなどの共同住宅は4%に満たないという結果が見られます。しかしながら、駅に近かったり、市街地に住めたり、高層階で眺めがよかったり、頑強なRC造だったり…と、マンションのメリットも見逃すことができません。

特に築年数が30年を超えるような築古物件では、便利な新潟市の中心部にありながら1,000万円以下で購入できるファミリータイプの物件も少なくありません。戸建てや土地に対して強いこだわりがない人にとっては、市街地の中古マンションはよい選択肢になりそうです。今回、そんな中古マンションを購入し、DIYで空間を造り込んだお宅(前回の記事の、足場板を使った実例でも紹介しています)を訪問しました。

 

海外のゲストハウスのような住まい

これまで仕事の都合で転勤が多く、以前は福岡に5年間、その前は関東で暮らしていたというYさんご家族。現在はご主人が関東で単身赴任中ですが、奥様と、高校生から小学生までの4人のお子さんがこのマンションで暮らしています。「2年前に福岡から新潟に戻り、新潟駅まで徒歩圏内のこのマンションを購入しました。子ども達がやがて成長して家から出て行くことを考慮して、今の家族の状況に必要最小限の空間で考えました」と話すYさん。そんなYさん家族が住むマンションの部屋は、まるで海外のゲストハウスのようなラフで自由な雰囲気にあふれています。

玄関扉を開くと、土間部分も居室部分も全て同じ店舗仕様の下足用クッションフロアが敷かれています。そして、かつて設けられていた間仕切り壁の大部分は撤去され、開放的な空間が広がります。玄関前のスペースには自転車が飾られ、その奥はパソコンスペースに。その隣はゆったりとしたソファが置かれたラウンジのようなスペースです。かつてクローズドタイプだったキッチンは、下がり壁を取り払ってオープンタイプに変更。カウンターには杉の足場板が使われています。

「壁のクロスをはがしてあえてパテ跡が残るコンクリートを見せたり、自分たちで壁を塗ったりしました。クッションフロアの施工や間仕切りの撤去、設備工事などは職人さんにお願いしましたが、それ以外は住みながら家族や友人と2カ月くらい掛けて楽しんで造り込みましたね」と話すYさん。

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少し低くなった玄関土間も居室も同じクッションフロアで仕上げた。

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玄関から眺める居室。かつては廊下と個室・納戸に分かれていた場所を大胆に繋げている。

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キッチン側から眺めるリビングは、ゲストハウスのラウンジのような空間だ。

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左のアコーディオンカーテンの奥には洗面・トイレ・浴室が。

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足場板を使った自作のカウンター。

子ども部屋を区切るのは、仮設のパーテーション

キッチンの奥へ進むと、そこには約14畳ほどの空間があり、そこが家族の寝室と勉強部屋を兼ねています。その空間は、杉の足場板のパーテーションとカーテンで細かく区切られ、4カ所にロフトベッドが置かれています。ロフトベッドの下には杉の足場板で作ったデスクが置かれたり、ポールを下げてハンガー掛けにしたりと、省スペースでも子ども達それぞれが自分の領域を作り上げているのが見られました。そこは、相部屋のゲストハウスのようでもあり、学生寮のようでもあります。

「4.5畳の和室だった空間はフリースペースとして使用していましたが、中学生の長男の約3.5畳の個室に作り替えました。自分で足場板を組み立て、本棚・ベッドも自作した隠れ家のようになっていて面白い空間になりました。子ども達の進学などでこの空間をまた作り替えますが、仮設のパーテーションなので簡単に間取りを変えられるんですよ」(Yさん)。家づくりを考えるとき、完成形をしっかりイメージして造り込むことが多いですが、Yさんの場合は、そもそも家族構成が流動的であることを前提に、柔軟に間取りを変えられる住み方を実践しています。

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小学生のお子さんのロフトベッドは幅広のデスクを兼ねている。

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足場板のパーテーションはT字型に組んで直立させている。

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パターン柄の布をカーテン代わりに使用。

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かつて4.5畳の個室だった場所はご長男の勉強部屋兼寝室。

そんなYさん家族の暮らし観が現れた印象的なエピソードがあります。

「福岡から新潟に戻ってくる年、3番目の子は小学校6年生でした。それで、福岡で共に育った友達と一緒に卒業をしたいと、一人だけ残って下宿暮らしを始めたんです。携帯電話のTV電話機能やスカイプを使って、定期的に連絡を取るようにしました。スカイプは繋ぎっぱなしにしていると、あたかも隣の部屋にいるような錯覚になるほど、距離感が近く感じて、離れていてもお互いに気に掛けていることが、本当の意味の『近さ』になることを体験しました」(Yさん)。

今やスカイプを始め、facebookやLINEなどさまざまなサービスを使えば、世界中どこにいてもコミュニケーションがとれる時代です。子どもが親元を離れて暮らすことも、かつてと比べたらそのハードルは大きく下がっているのかもしれません。今後ますますコミュニケーションツールが進化していくことを考えると、「家」という概念も「家族」という概念も少なからず変化をしていきそうです。

「家」というものへ強いこだわりを持たず、家族が共に過ごす一時期を存分に楽しむことを重視したYさん家族。「約80平米のこの部屋は確かに手狭ですが、子ども達が全員この家にいるのもあとわずかでしょうから、少し不便なこの環境を兄弟同士で深く関わり工夫しながら楽しんでもらいたいと思っています。何より、子ども達が『住むところは自分で知恵を出して自由につくる』ことを実践してくれていることがうれしいです」(Yさん)。中古マンションをDIYリノベした暮らしには、そんな家族の思いが込められていました。

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むき出しの金具が足場板の風合いになじんでいる。

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躊躇せずにビスを打つことができるのも足場板の長所。

(写真・文 ハウジングこまち編集部 鈴木亮平)

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