※本記事はリフォームKomachi Vol.9(2022/8/25発行)の『リノベーション建築巡礼』掲載記事です。
日本有数のニットの生産地・五泉市。
今回訪れたのは、その五泉のニット産業の拠点となる建物だ。
1950年代後半に現在の場所に移築されたこの木造建築は、2021年に改築され「LOOP & LOOP」という名前の複合施設に刷新。
ニット製品を扱う店舗やカフェなどが新たにつくられ、ニット関係者以外の人も気軽に立ち寄れる場に変貌した。
元々この建物には五泉ニット工業協同組合の事務所が入っており、かつては多くのニット関係者で賑わったという。
建物1階には理容室や宿直室、お風呂などがあり、2階の大空間では、宴会や結婚式も行われていた。
また、近所の人にも開かれ、子ども会などの集まりにも使われていたという。
地域に愛されてきた場所だったが、近年は建物の1階の事務所と会議室だけが活用され、かつての賑わいは失われつつあった。
「建物に愛着を持っている組合員の方がたくさんいらっしゃり、『この建物を活かして、五泉ニット産業や五泉市を盛り上げる場所にできたらいいね』と話をしていたところから改築計画が始まりました」と、組合の主事・鈴木博江さん。
本プロジェクトの統括を担ったのは、五泉市に事務所を構える塚野建築設計事務所の代表・塚野琢也さん。
「元々は兵舎の建物の一部を移築した建物のようで、天井裏を調べると、今では珍しい大きな木造トラスがありました。組合員のみなさんが建物に愛着を持っていることも知り、なるべく元々あったものを活かしてリノベーションすることにしたんです」。
いろいろな人が交流する場をつくるという目的に合わせ、設計を1社で行うのではなく、五泉市内で活動する設計事務所が集まって結成した「GOSEN BOYS」というチームでプロジェクトを進めたという。そんなプロセスも特徴だ。
老朽化していた正面の外壁は左官仕上げにし、入口は木製建具に一新。
事務室があったガラス張りの空間は、既存のカウンターや窓はそのままに、立ち寄りやすいカフェにつくり変えた。
会議室はショップに。
ホールはワークショップスペースに。
和室はコワーキングスペースに再生。
2階の大ホールは天井の一部を解体し、力強い木造トラスを現した。
「『ニットでつながる、みんなのスペース』をコンセプトにしており、実際にいろいろな方に立ち寄ってもらえるようになりました。これからもたくさんの人が集い、笑い声が絶えない場にしていきたいです」と鈴木さん。
再び地域に開かれた歴史ある建築は、ニット産業の拠点に留まらず、地域を盛り上げる役割も期待されている。
【DATA】
ニットでつながる、みんなのスペース LOOP & LOOP
住所/五泉市吉沢1-1-10
TEL/0250-42-2156
五泉ニット工業協同組合
構造/木造
築年数/築65年(推定)
延床面積/450.80㎡(136.36坪)
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