地域のシンボル角田山をあしらったデザイン
えっ!工務店なの?と一瞬目を疑ってしまう個性的な店名サイン。某アウトドアブランドを彷彿とさせるユニークなデザインですが、たしかにそこにはkoumuten(工務店)の文字があります。しかも描かれている山は西蒲区のシンボル角田山。こちらは、2014年秋に独立開業した西蒲区竹野町にあるヤマガ工務店さんの店名サイン。このユニークな社名デザインについてお話をうかがいました。
「独立開業するにあたり、『工務店』の既存のイメージを変えて、若い人にも目を向けてもらえるようにしたいと思いました。それで、ロゴやマークはインパクトのあるものがいいと思ったんです」とヤマガ工務店の山賀孝広さん。角田山のイラストは山賀さんが自ら作成したもの。「地元の方には、すぐに『角田山だね』と気付いてもらえるんですよ」(山賀さん)。地域の人が見慣れている山を用いることで、言葉を介さずに地元大工の安心感を感じさせるコミュニケーションデザインが実現されています。
ユニークな取り組みのひとつが、この店名サイン入りのキャンバス素材のトートバッグ。「開業してあいさつ回りをする際の手土産を考えていたとき、ちゃんと使ってもらえるものがいいと思ったんです。社名入りのタオルでは、ビニル袋から出されることもなくしまわれることが多いですが、トートバッグなら使ってもらえるんじゃないかと思って」と奥様の山賀佳世さん。このバッグは現在、見積もり・相談をしたお客様へのプレゼントとして活用されています。
目指しているのは頼れる町の大工
そんな山賀さん夫婦が目指しているのは、「頼れる町の大工」だと言います。「例えば『自転車小屋を作りたいんだけど…』という要望があったときに、大きな住宅会社に頼むのは抵抗があるという人は多いですよね。その場合、自分は現場の大工として経験を積んできましたので、現場を見ればスケジュールや見積もりをすぐに出して素早く対応できます」(山賀さん)。確かに、営業・設計・監理・施工と、職能が細分化されている規模の大きな住宅会社では、小さな工事を受けるとコストが上がってしまい対応が難しいと言えます。小規模な工務店だからこそのフットワークの軽さで、住まいの悩みをスピーディーに解決できるのは、町の人にとって非常にありがたい存在。「例えば、町のラーメン屋さんとチェーン店のラーメン屋さんを比べた場合、町のラーメン屋さんはメニューにない注文にも柔軟に応じてくれたりしますよね。そんな町のラーメン屋さんみたいな工務店でありたいです」と山賀さんは笑顔で話します。
DIYのサポートやコストダウンのアイデアでお客さんのニーズに応える
そんなヤマガ工務店さんだからこそ、家づくりは顧客目線を徹底しています。メンテナンスのしやすい素材を用いることや、コストダウンのアイデアを提示するなど、常にお客さんにとって最良と考える提案を出すそうです。「例えばクローゼットの中の壁の仕上げを省略するといったコストダウンのアイデアだけでなく、道具を貸してDIYのサポートをしたりもします。特にDIYは工事費を抑えられるだけでなく、家族にとって家により愛着を持ってもらえる体験になります」(山賀さん)。お客さんが喜んでくれることを最重要視するという一貫した姿勢を持ちながら、常に新しいデザインや建材にもアンテナを張るということも忘れずにいたい。そんな山賀さん夫婦の思いは、ユーモアのある社名サインからも感じることができます。
ヤマガ工務店さんでは、リフォームの依頼が多いと言います。新築は人生の大きなイベントですが、それはごく一時的なこと。実際その家での暮らしは、そこから数十年続いていきます。その間にたびたび起こる、住まいの悩みやトラブルを柔軟に解決してくれる大工さんの存在は欠かせません。山賀さん夫婦が目指す「頼れる町の大工」とは、リフォームというよりも、住まいに関するコンシェルジュサービスという方が適切なように思います。
また、ヤマガ工務店さんでは、社名入りのマグネットも製作をしていますが、「このマグネットが欲しい!」という要望も多いとか。ユニークな親しみやすさや共感を感じさせる、次世代の町の大工さんが、これからの地域の工務店のイメージを変えていくかもしれません。
取材協力:ヤマガ工務店
(ハウジングこまち編集部 鈴木)
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