建設資材のプロが扱う足場板
前回の記事で紹介した沼垂テラス内の杉足場板専門店「s-plan」。このようなニッチな分野のお店を一体どんな人がやっているのだろう?と疑問に思われた方もいるかもしれません。
実はこのショップを運営しているのは、建築資材のリース会社である杉崎リース工業株式会社(新潟市北区新崎)。こちらの会社では、九州や中国地方、関東や東北にも支店・営業所を構え、各地で建設業者向けの資材のリースを行っています。とりわけ、敷鉄板の保有数は全国でもトップクラスを誇っているそうです。
s-planで販売している足場用の杉板は、杉崎リース工業が取り扱う建設資材の一つ。最近では、建設現場の足場板はアルミ素材が用いられることが多いそうですが、西日本では杉板が今でも重宝されているといいます。しかし、そんな杉の足場板。これまでは古くなってその役目を終えた物は廃棄されていたのだそうです。
「数年前から一般の方が足場板をインテリアに取り入れるケースが増えてきました。その中で、私たちが保有する足場板を必要としている方に届けたいと考えるようになりました」と話すのは、杉崎リース工業の杉﨑由樹さん。そんな時に「沼垂テラス」の存在を知り、ニッチな商材との相性の良さが決め手となり、お店を始めたのだそうです。
s-planは、杉崎リース工業のプロジェクトの一つとしてスタート。ショップの内装仕上げの一部は社員によるDIYで、毎月1回沼垂テラスで行われる「朝市」の際には、社員も参加してイベントを盛り上げるそうです。「社員にとっても楽しみの一つになっていますし、このような違った視点を持つことで、会社が取り扱う材料についてそれぞれが思い入れを深めているのを感じます」(杉﨑さん)。
オフィスでも活躍する足場板
この杉の足場板。今年の5月にリニューアルを終えた杉﨑リース工業の本社でも使われています。「会議室のテーブルは、スチール製の架台に足場板を載せたものを使っています。組み合わせを簡単に変えられるので、大きなテーブルにして、社内でパーティーをすることもできるんですよ」(杉﨑さん)。会議室で足場板を使っている会社はなかなかありませんよね。社員が日常的に足場板を楽しめる杉﨑リース工業。「足場板の魅力を伝えたい」という思いは、オフィスの中にも見ることができます。
ちなみにこちらの本社のリニューアル。以前は工場で働く社員の方の休憩スペースとして使っていた場所だったとか。2階まで吹き抜けになった明るい大空間に、木毛セメントの天井仕上げはまさに工場の趣を感じさせます。
設計を担当したのは、田中洋人建築設計室(新潟市中央区医学町通)の田中洋人さんと、トリノス建築計画の 大友和樹さん(東京都渋谷区幡ヶ谷)。「古い部分を生かして、工場の雰囲気を残すことに気を遣いました」と、田中さん。ファサードには、1階部分をガラス張りにしながらも、2階部分の外壁は一度はがした既存の外壁を再度張り直すというこだわりが見られます。この新しさと古さの融合により、この会社のアイデンティティが強く表現されています。
また、内部には「支保工材(しほこうざい)」と呼ばれる建設資材で仮設のフレームが組まれています。格子状に組まれた支保工材の空間には木製のボックスが入れられ、そこが本棚として機能するなど、建設資材を扱う会社ならではの遊び心も見られます。
「元が工場だったため、徹底的に断熱工事もして頂いたんですが、この大空間でもエアコンの効きがよく、省エネ性も高いオフィスになりました」と杉﨑さん。
店舗にも住宅にもなじむ足場板
しかしながら、なじみのない人にとって足場板はなかなか手を出すのに勇気が必要かもしれません。そこで、実際に足場板を使った実例を見せていただきました。まずはマンションでの実例です。
上はスチールの架台に足場板を載せてカウンターにした例。下は足場板を蝶番でつなぎ、パーテーションとして利用した例です。手前に見えるのは収納ケースの上に足場板を置いただけですが、それだけで部屋の雰囲気を変えることができます。板の組み合わせだけで、機能的で心地よい空間を作り出せることを、これらのケースから知ることができますね。
次は店舗での実例です。
写真は店舗のカフェスペースや、テーブル席に足場板を使ったケースです。ラフでありながら、木の温かみを感じさせるスペースができあがっています。
沼垂テラスのs-planには、足場板を求めて富山や福島などの隣県からも訪れる方がいるそうです。密かに注目を集めている足場板は、実は気軽に使えることも人気の理由かもしれません。
DIYの人気の上昇とともに、足場板のニーズは今後ますます高まっていきそうですね。
取材協力:杉崎リース工業株式会社、田中洋人建築設計室
(写真・文: ハウジングこまち編集部 鈴木亮平)
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