※本記事はハウジングこまちVol.33(2021/12/25発行)の巻頭特集『眺望のいい家』掲載記事です。
「もう少し早い時期でしたら、一面緑色のキャベツ畑が見えたんですよ」。
ウッドデッキに立つご主人が、既に収穫が終わった目の前の大地を眺めながら話す。
畑の向こうには田んぼが広がり、その先には小高い丘が連なっている。
何十年も前から変わっていないであろうその風景は、昔話に出てきそうなノスタルジックな趣きがある。
秋の午後の日差しを受けたススキが黄金色に輝き、無数のトンボがあたりを飛び交っている。
胎内市出身のご主人と、新発田市出身の奥様は、二人とも広い家で育ったという。
「実家はゆったりとした土地に立っていて、屋根に上がって景色を眺めながら過ごすのが好きでした」。
そう話す奥様は、新しく建てる家にも眺望の良さを求めていた。
とりわけ、東にそびえる二王子岳を望めることが外せない条件だった。
そんな希望を満たす土地を2年程前に購入した。
しかし、購入後間もなく目の前に4棟のアパートの建設が始まったという。
期待していた眺望が得られなくなり、その土地は売却。
再び不動産会社を訪ねて回り、ようやく見つけたのが今年家を建てた非公開物件の土地だった。
「この土地には、昔神社が立っていたそうです。購入時は雑草や木が茂っていて、それらを全て取り除いて整地するところから始まりました」(ご主人)。
畑や田んぼの中に人家がぽつりぽつりと立つのどかな環境は、奥様が求めた理想の土地だった。
意外にも新発田駅から車で10分も掛からない場所であり、実は日常生活を送る上での利便性も高い。
暮らしの中心となるLDKの大まかなプランは、奥様がスマホアプリを使って作成したという。
畳リビングがあり、その前には深い軒が架かったウッドデッキ。そこから遮るものがない広大な景色を眺める計画だ。
担当した建築士は、その意図をくみ取りながら、合理的な動線や収納計画を詰めていった。
そうして、開放的な南側と、収納や水回りなどの機能を詰め込んだ北側の両方がバランスよくまとまった家ができ上がった。
キャベツ畑に面した南側には、寝室、リビング、ダイニングが並んでおり、各部屋から穏やかな風景を楽しめる。
畳リビングの掃き出し窓は引き込み式。全開にすると幅2.7mの大開口ができ、ダイナミックに外と繋がる。
下屋につくられたデッキにはアウトドア用のローチェアやテーブルが置かれており、そのリラックスした空気感は、田園リゾートと呼ぶにふさわしい。
「景色を眺めながらぼーっとしていたくなる家ですね」と奥様。
二度の土地購入という紆余曲折を経たが、明確な目的意識を持ち続け、思い描いていた理想の家を具現化するに至った。
【DATA】
新発田市 T邸
延床面積 133.31m²(40.33坪) 1F 101.02m²(30.56坪)
2F 32.29m²(9.77坪)
家族構成/夫婦
竣工/2021年9月
構造/木造軸組工法
(取材時期:2021年秋)
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