手軽でインテリア性の高いミニ盆栽
中国が起源とされ、2,000年以上の歴史を持つ盆栽。日本での歴史も長く、鎌倉時代には渡来していたと言われています。そんな盆栽は、これまでは主に年配の方の趣味という印象が強かったように思います。しかし、最近では、より手軽に楽しめるミニ盆栽が30代を中心とした若い世代の注目を集めています。
今回取材で訪れた新潟市江南区松山にある「ぼんさい屋とき」の高橋星児さんは、伝統的な盆栽ではなくミニ盆栽を専門に手掛けています。高橋さんの盆栽づくりの特徴は、自ら窯で器を焼くところから始まる点にあります。「植える木や草花とのマッチングを考え、既製のものではなく自分で制作をした器を使っています」と高橋さん。
学生時代、京都の大学で陶芸を専攻し、その後陶器の製造会社で製造や販売に携わっていた経歴を持っています。20年以上暮らした京都から2013年に故郷の新潟市江南区に戻り、「ぼんさい屋とき」をスタートさせました。
「住まいに十分な広さの庭を確保できなくても、植物に触れたいという方は多いですよね。小さな盆栽は室内に置くことができますし、手入れもそれほど難しいものではありません。20代~40代くらいのお客さんが多いのですが、盆栽を始める“取っかかり”になれればと思っています」(高橋さん)。
伝統的な盆栽は馴染みのない人にはややハードルが高いものですが、ミニ盆栽は手軽に始められるインテリアとしてのポジションを確立しつつあります。「手のひらサイズなので、食卓に置いたり、玄関に置いたりと簡単に飾る場所を変えられます。かつての盆栽にはない特徴ですね」(高橋さん)。
器との融合で生み出される新しい価値
また、盆栽というと主に植えられている木の方が注目され、器はおまけのような印象があったかもしれません。しかし、高橋さんが手掛ける盆栽はそれぞれに表情が異なる器と植物が融合した作品となっています。それに、もし木が枯れてしまったとしても、残った器に次に何を植えようかと考えることで、その楽しみは続いていきます。
常時40~50種類の盆栽を扱っている高橋さんは、盆栽を植えることや、器をつくること以上に、「木と器の組み合わせを考えること」が面白いと言います。植物に合わせて器を焼くことはもちろん、焼き上がった器に合わせて木や草花を選ぶこともあるそうです。
そんな高橋さんは「出張ぼんさい屋」として県内外のイベントに出展することが多いとか。「車で一度に100程度の盆栽を運ぶことができるんですよ。ちょっとしたスペースがあれば展示できるのも便利ですしね。また、定期的にワークショップを開くことで、植え替えのやり方などを伝えたりもしています」(高橋さん)。
また、ミニ盆栽というニッチな分野のスタートアップが軌道に乗った理由の一つとして「新潟の花卉や園芸がさかんな地域性がありますね。秋葉区に行けば欲しい木や草花がすぐに手に入る。そんな環境に助けられています」と高橋さん。
食卓やリビングを彩る飾りとして、ちょっとした贈り物として、今後さらにその活躍の場を広げていきそうなミニ盆栽。今後の進化にも注目したいですね。
取材協力:ぼんさい屋とき(Facebookページ)
ハウジングこまち編集部 鈴木
コメント