※本記事はリフォームKomachi Vol.9(2022/8/25発行)の巻頭特集『人生を変えるリノベーション』掲載記事です。
納屋らしさを活かした、古くて新しい住まいのカタチ
阿賀野市旧京ヶ瀬村の集落で暮らすKさんご夫婦の家は、瓦を載せた切妻屋根の伝統的な佇まい。
庭を挟んで向かい側にある母屋(実家)や、近隣の家々も同じように瓦屋根を載せており、味わいのある風景をつくり出している。
「この建物は、実家で納屋として使っていたものなんです。いつかここを改築してみたいと高校生の頃から考えていました」とご主人。
以前はここでお米の乾燥や精米をしたり、トラックを置いたりしていたが、6~7年前にお父様が田んぼ仕事をやめてからは物置になっていたという。
2020年に結婚したKさんご夫婦は、この納屋を新居につくり変えることにした。
「サッカーコーチをやっていた学生時代に、お父さんコーチのお宅にお邪魔したんです。農家の建物を改築した家で、家族や友達が集まれる広いリビングがありました。その家が素敵で、手掛けた建築士さんに依頼をすることにしました」(ご主人)。
車や機械を入れるためにつくられた納屋は、5.4mもの大スパンがある開放的な造りで、改築前の状態がほぼスケルトン状態。
整った矩形の平面を活かし、住居へとつくり変える計画を進めた。
「カフェ巡りが好きな妻と一緒に古い建物を改築したお店に行くことも多く、その経験が空間のイメージづくりに役立ちました」とご主人。
そうして実現したのが、大きな梁や桁などの小屋組を現した大きな吹き抜けのある住まいだった。
重厚な梁や桁を眺めながら、リラックスした時間を味わう
中央のリビングを囲むようにキッチンや水回り、畳スペース、個室を配し、南側に突き出していた軒下は壁で囲んで室内化。広い土間スペースもつくり出した。
頑強な小屋組がつくり出す大スパンのリビングは、自然と引き寄せられるような求心力がある。
その一方で、水回りや個室はプライバシーが確保できる外側にうまく分散している。
中央のリビングから15㎝下がった場所にあるキッチンも夫婦のお気に入りだ。
4.5畳のキッチンは壁側にコンロ、ダイニング側にシンクを配したⅡ型。吊り棚にはグラスがずらりと並び、ゲストと過ごす時間が好きなご夫婦の個性が現れている。
リビング側から見えにくい位置には3畳のパントリーを配し、食品ストックや調理器具だけでなく、冷蔵庫も隠している。
「私たちは二人で料理をすることが多いですが、キッチンの間隔が広いので作業がしやすいですね。器が好きで益子の陶器市に出掛けたりもするんですが、お気に入りのものを飾れるように棚もつくって頂きました」と奥様。
時代の変化と共に役割を終えたと思われた納屋は、地域性あふれる住まいに生まれ変わった。
全国有数の米どころである新潟県。この地にはおいしいお米だけでなく、様々な可能性を秘めた納屋も多く残されているのかもしれない。
【DATA】
阿賀野市 K邸
家族構成/夫婦
種別/戸建て(築22年)
構造/木造軸組工法
延床面積/166.12㎡(50.25坪)
リフォーム面積/166.12㎡(50.25坪)
(取材時期:2022年7月)
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