自然素材と高性能。
住宅において一見相反するように思えるこの2つの要素を組み合わせることで、着実にファンを増やしてきたオーガニックスタジオ新潟株式会社(新潟市西区山田)。
2009年の設立以降順調に成長し、現在は年間建築棟数20棟程度を上限に、常時順番待ち状態が続いているといいます。
そんなオーガニックスタジオ新潟では、同社の標準仕様を表現したモデルハウス「スタンダードモデルハウス」を2013年に新潟市西区小新大通に竣工。断熱した基礎内をエアコンで暖め、1階はもちろんのこと、吹き抜けで2階までを均一な温度にする暖房システムを採用していました。室内はナラの無垢フローリングで自然素材の心地よさを味わえる空間が広がっており、吉村障子などの和の要素を取り入れたモダンなデザインで、時を経ても陳腐化しないタイムレスな空間が完成していました。
約4年間使ってきたこのスタンダードモデルハウスは2017年秋に公開終了。そして、今回2017年12月に新たなモデルハウスが新潟市中央区網川原に完成しました。さっそく取材をしてきましたので詳しくご紹介します。
平入りの建物で統一感のある街並みをつくる
今回お話をうかがったのはこのモデルハウスを設計した阿部誠治さん。
新モデルハウスは「網川原まちなみモデルハウス」と名付けられています。実はこのモデルハウスがあるのは、オーガニックスタジオ新潟が購入した連続する3区画の土地の一番右側の土地。現在左端の土地にも家が立っており、2019年1月頃には真ん中の土地にも家が立つ予定なのだそうですが、オーガニックスタジオ新潟が手掛けるこの3つの家には、独自のガイドラインが設けられているのだそうです。
「通りから軒が連なっているように見える『平入り』の建物にすることや、植栽を共有して境界を曖昧にしながら一体感をつくり出すことなどをガイドラインにしています」と阿部さん。
取材に訪れた日は大雪で外構が埋もれていましたが、雪が溶けるとオーガニックスタジオ新潟の特徴の一つでもある「外構と建物の融合」を見ることができます。
今は中央の土地がぽっかり空いていますが、3軒が並んだ風景も楽しみですね。
モデルハウスは北側道路に接道しており、ポーチと連続した6畳の広さのアウターデッキがポーチの左側にあります。
そこは自転車等を置いておくのに重宝しそうですし、イスやテーブルを出してお茶をしたりという使い方も良さそうです。
「私たちもここでストーブで暖をとりながらお茶をしてみたのですが、居心地が良くて楽しく過ごせました(笑)」(阿部さん)。アウターデッキは勝手口からパントリー、そしてキッチンへと繋がっているので食事やお茶を出すのも簡単なのだとか。
天井の格子が上質な雰囲気を醸し出すリビング
玄関ドアを開けると豆砂利洗い出し仕上げの土間があり、その奥のリビング越しに南側の庭まで目線が抜けます。
整った形の落ち着いた玄関ですが、近年流行っている「シューズクローク」は同社ではあまり提案しないのだそう。理由はシューズクロークが付いた玄関が美しくないから。そのような美的感覚を大事にしていることも同社の特徴となっています。
下足して真っ直ぐ進んだところにリビングがありますが、この空間でなんと言っても目を引くのが格子天井です。
高さを抑えた天井に格子が組まれ、空間に方向性が生まれています。自ずと目線は外へと運ばれ、庭の景色が楽しめる設計となっています。
中央にはTVボードが置かれていますが、これによりリビングとダイニングをセパレート。食事の場とくつろぐ場を分けることによって、それぞれにちょうどいい居場所が生まれています。
南側中央には大きなFIX窓。その両サイドには樹脂窓があり、この両サイドの窓から外へと出られます。
ちなみに全てトリプルガラスが使われているので、冬でも日差しが差すとそれだけで室内温度が上昇する程の断熱性能を持っているのだそう。
ちなみに戸袋に完全に隠れていますが、障子で目隠しをすることもできます。
樹脂窓部分だけ障子で隠すと、下の写真のようにとてもすっきりとした空間に変化。
そして、障子を全て引き出した状態がこちら。
天井の格子の流れと障子の桟が一体感をつくり出しています。伝統的な意匠としながらも、それはモダンな雰囲気を感じさせるリゾートホテルのようでもあります。
程よい広さのダイニングはキッチンの正面に配置。
木の優しい質感に包まれた空間では、毎日の食事の時間が特別なものになりそうです。
キッチンはダイニング側の棚と背後のカップボードが同じ素材でまとめられており、統一感があります。
カップボードの下には間接照明が仕込まれており、上質な雰囲気を感じさせます。夜はさらにいい雰囲気になりそうですね。
こちらのキッチンを別の角度から見ます。
冷蔵庫の横には小さなデスクが造作されています。ちょっとした作業をしたりPCを置くスペースとしても良さそうです。
ベンガラ色で新潟らしさを表現
こちらのモデルハウスはベンガラ色(酸化鉄に由来する独特の赤い色)がキーカラーに使われており、リビングに置かれたソファーの色もその一つ。錆び色のようなくすんだ赤がどこか新潟らしさを感じさせるというのが同社相模社長の考え方で、このソファーの他にも玄関ドアや、リビングの天井の格子の上にある板にもベンガラ色が使われています。
ダクトエアコンで温度差のない家を実現
ところで、取材をしたこの日は朝から吹雪に見舞われる真冬日でしたが、玄関ドアを開けた瞬間から何とも心地いい暖かさに包まれました。
リビング内の温度計は21.6℃で湿度は40%。快適な温度・湿度が保たれていましたが、室内を見渡しても暖房器具が見当たらず、エアコンの稼働する音も一切聞こえてきませんでした。
実はこのモデルハウス、「ダクトエアコン」という新しい暖房システムが使われています。キッチン裏のパントリー内に設置されたエアコンからダクトが伸びており、1階の床・1階の天井付近・2階の床下と、家中に暖気が行き渡るようになっています。ダクトエアコンで空気が暖められると同時に換気も行えるので、新鮮な空気も取り入れられて一石二鳥。
これまでは断熱した基礎内を「床下エアコン」で暖めて、吹き抜けを設けて1階だけでなく2階までも均一な温度に暖める暖房方式としていましたが、この方式で最大限の効果を発揮するには、吹き抜けを設ける必要がありました。
しかし、ダクトエアコンの場合は吹き抜けを必要としないため、より自由な間取りとしながら快適な温熱環境をつくり出すことができるのだそうです。
「オーガニックスタジオ新潟は新しいことにチャレンジをしていく社風があり、住宅の設計をする際、常に新しいテーマを3つ盛り込むことがミッションとなっています」と阿部さん。そんな社風だからこそ「床下エアコン」も新潟県内でいち早く採用。同社で新しく「ダクトエアコン」という冷暖房システムを採用することになったのも自然な流れと言えそうです。
温度差がなく快適な眠りにつけそうな2階寝室
次に階段を上がって2階に向かいます。階段途中に大きな樹脂窓がありますが、こちらはドイツのユニルクス社のドレーキップと呼ばれる窓を採用。ドレーキップ窓とは、一つのハンドル操作で内倒しと内開きの2種類の開き方ができる窓のことを指します。
換気だけをしたい場合は内倒しにして使い、風を多く取り込んだり窓の掃除をしたい時には内開きにして使います。
階段を上がって左側は洗面脱衣室と浴室。水回りを2階に持ってくることで、1階をシンプルに広く使えます。
反対に進むと将来2室に分けられる子ども部屋があります。
他の部屋と比べてダークトーンの寝室はリラックスできる空間です。間接照明やスタンドタイプの照明がホテルのような心地いい光をつくり出します。壁には古材がアート作品のように取り付けられていますが、これはオーストラリアで使われていた鉄道の古い枕木なのだとか。
寝室の一角にはデスクがあり書斎として使うことができます。
ちなみに、前述のダクトエアコンで2階の床を暖めているため、2階にいても1階と同様の暖かさに包まれます。
暖房の近くは暖かくても、離れるほどに温度が低くなる家が少なくありません。しかし、こちらのモデルハウスにおいては、高い断熱性能と新しい暖房システムの組み合わせにより、温度差がなく、どこにいても心地よく過ごすことができます。
常に新しいことを学び実践を続けるオーガニックスタジオ新潟は、業界誌にも取り上げられることが多い住宅会社。
同社の最新のデザインと快適な空間をぜひモデルハウスで体感してみてはいかがでしょうか?
取材協力:オーガニックスタジオ新潟株式会社
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