新潟市の商業地域、西堀通沿いにある「ヒメミズキ」。通りに対して謙虚に佇んでおり、気を付けないとうっかり通り過ぎてしまいそうになる小さなお店です。
こちらは2014年6月にオープンした器の専門店。扱っているのはすべて日本各地の作家による手作りの器で、なかなか他では見られない物ばかりがセレクトされています。
わずかな時間にも、ゆとりを感じさせる器の力
ヒメミズキの店主・小笹教恵さんは、以前はインテリアショップで働いていたそうです。インテリアショップでの仕事を辞めて、作家による手作りの器の専門店という、ニッチな業態のお店を始めた経緯をうかがいました。
「インテリアショップにいた頃、とても忙しく働いていた時期がありました。インテリアコーディネーターなのに、自分の暮らしを考えられないような日々が続いてしまって。そんな時、ふと家で器に花を活けてみたら、たった10分程度の時間でもゆっくりと楽しめることに改めて気付いたんです。」と小笹さん。
「そう感じる方が実は多いのでは?と思ったことが、器専門のお店を始めるきっかけになりましたね」。
また、それ自体がアートのようでもあり、生活の中で使える実用性も器の魅力、と小笹さんは話します。
日本の文化が凝縮した器
ヒメミズキでは定期的に生け花やお茶会などのイベントやワークショップも催しているそうです。「日本の器には日本の文化が凝縮しています。花を活けたり、お茶をたてたり、食器も季節によって色や素材を使い分けるような文化がありました。でも今は情報が多すぎて、そんな器を通して文化を楽しむことが疎かになっているように思います。ワークショップを通してそんな日本の文化の魅力を改めて感じてほしい」と小笹さんは話します。
店内には様々な形や大きさの器に季節の花が生けられ、白を基調としたシンプルな空間に彩りを与えています。ヒメミズキはただ器を展示販売するだけのショップではなく、器がもたらしてくれる緩やかな時間を感じさせるショールームのようでもあります。
器との出会いは作家との出会い
ヒメミズキで取り扱っているのは北東北から九州まで、日本各地の作家の器です。小笹さんは、どんな方がどんな思いで作っているかを知らなければいけないと、各地の工房などを訪れた上で作家に制作を依頼しています。また、器の注文をする際には、「その作家さんが好きでお願いしているので、あまり細かい要望は出さないようにしています」(小笹さん)と、常に作家への敬意を忘れません。
そして陶器の器は、釉薬や炎の加減で一つとして同じものはできません。また、依頼してから届くまでに1年以上掛かる場合もあり、ヒメミズキで扱っている器の種類は常に変化をしています。その時によって変わる器やその向こう側にいる作家との出会いが、ヒメミズキで提供されているように思います。
お店がスタートして1年2カ月が経過し、ヒメミズキの価値観に共鳴するリピーターが増えているといいます。
「これからもっと日本の文化を伝えていける店にしていきたいですね。いずれ、子どもを対象とした華道や茶道教室もできるといいなあと思っています」(小笹さん)。
実は小笹さん、インテリアショップで働く以前は幼稚園教諭の仕事をしていた経歴があります。「幼稚園で子どもたちと接している中で、お母さんが暮らしを楽しんでいると、その子どももとても生き生きとしているのを感じていました」と小笹さん。
幼稚園教諭、インテリアコーディネーター、そして器の専門店。小笹さんは、さまざまなキャリアを重ねながら、常に「暮らし」の大切さと向き合ってきました。
そんな小笹さんが運営するヒメミズキ。ここでは、小さな器にも、暮らしを豊かに変えていく大きな力が宿っていることを強く実感させてくれます。
取材協力:ヒメミズキ 小笹教恵さん
〒951-8062 新潟県新潟市中央区西堀前通5番町740-5 遠山ビル1階
TEL・FAX 025-201-9252
営業時間 11:00 ~ 18:00 (火曜日定休)
(写真・文: ハウジングこまち編集部 鈴木亮平)
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