2016年に新潟市中央区山二ツに開業した設計事務所、暮らしのデザインCraft。代表の松尾貴弘さんと宮路加奈子さんの2人の建築士で、住宅を中心に設計施工を行っています。
ちなみに松尾さんと宮路さんは実の兄妹。松尾さんは新潟で、宮路さんは東京で、それぞれ違う場所で建築のキャリアを積んで、一緒に開業をしました。
そんなCraftさんが手掛けているのは、白をベースとした透明感のある明るい住まい。階高を抑え、華美な装飾を排除した、気張らずに安らげる空間が特徴です。その一方で、繊細にミニマルな美しさを追求する姿勢も見られます。
トレンドを追い求めたデザインは陳腐化するスピードも早いものですが、Craftさんはそのような考え方とは一線を画したデザインをしています。
建築士自邸が買える!
さて、そんなCraftの住まいですが、なんと現在販売中の新築住宅が五泉市にあります。五泉市赤海の分譲地フラワータウン内にある2017年1月に完成した住宅です。
実はこの家は、Craftの宮路さんが自邸として建築をしたもの。宮路さんとご主人と2人のお子様の4人家族で暮らす家として建築をし、しばらくの間はコンセプトハウスとして活用していました。しかし、諸事情からその場所での暮らしがライフスタイルに合わなくなってしまったため、2017年9月に販売に踏み切ったということでした。
モデルハウスや建売住宅としてではなく、建築士自身が住むためにつくった家を買えるというのは滅多にないケースです。
モデルハウスのように「見せること」が目的でもなく、お客さんの希望に合わせてつくる注文住宅でもない。それは建築士の思い描いた理想を純粋に現実化したものと言えます。
では、どんな住まいなのでしょうか?中に入って見てみましょう。
高さを抑えた、街並みに溶け込む外観
まず、こちらが外観です。
白いガルバリウムの外壁を中心に、部分的に板張りの外壁が見られます。
この写真を見て何か気付くことがありますでしょうか?
実はこの建物、一般的な2階建ての住宅よりも60cm~1mくらい高さが抑えられているんです。
「1階の階高(床から天井までの高さ)は2,200mmにしています。通常2,400mmが一般的な住宅の天井高なので、それよりも20cm低くつくっているんですよ」と宮路さん。
それは高さを抑えることで圧迫感をなくし、街並みに溶け込むようにしたいという考えからなのだそう。意識的に見ないと気付かないかもしれませんが、建物がどこか優しげな雰囲気を放っているのは、その色の明るさだけではなく、建物の高さによるものでもあります。
敷地内にはヤマボウシとジューンベリーの木が植えられています。どちらも果実がなる庭木で、ジューンベリーはその名の通り6月に実がなりますが、今年の夏は1本の木からざる2つ分の果実が取れたそうで、宮路さんはそれを冷凍庫で保存し、家族でスムージーにしながら楽しんでいるとのこと。
これから家を建てて庭木を植えようと考えている方は、果実にも注目してみてはいかがでしょうか?ちなみにヤマボウシも果実がなるそうで、ジャムや果実酒などに加工するのに向いているようです。
アプローチを進んでいくと、家のリビングの前に大きなデッキテラスが現れます。外からはコンクリートの塀で隠されていますが、ゆったりとした居心地の良さそうなデッキになっています。
実は宮路さん家族はアウトドアやキャンプの愛好家。現在は奥様のご実家にて暮らしているそうですが、月に1回は庭でバーベキューを楽しんでいるそうで、こちらの家をつくるときにもバーベキューが思い切り楽しめるスペースが必須だったとのこと。
デッキの半分近くは屋根で覆われており、程よい日よけにもなりますし、多少の雨でも外で過ごせます。暖かい時期にイスを出して読書をしたり、寒い時期はストーブを出して過ごしたり、日常的にアウトドアを楽しめる暮らしができそうです。
ちなみに後ろには外部収納があり、そこにキャンプ道具などを保管できるのだそうです。キッチンともつながっているので、食品庫としても重宝しそうですね。
大きな吹き抜けで開放的な1階
じっくりと外を見てきましたが、次に家の中を見てみましょう。
豆砂利洗い出し仕上げの玄関から中へ入ります。
こちらが1階のLDK全景です。
頭上には大きな吹き抜けが広がり、2階の「登り梁」と呼ばれる屋根構造まで空間が一体になっています。LDKは16畳でそれほど広いわけではありませんが、2階やデッキテラスとの繋がりのおかげで、外観のコンパクトな佇まいからは想像できない大きな空間となっています。
しかも、吹き抜けに面した2階部分は仕切りが少なめ。家が丸ごと大きなワンルームのようなつくりになっています。「ダイニング側からは2階の寝室まで見えるつくりにしています。引き込み式の戸をつけているので、必要に応じて目隠しすることもできます」(宮路さん)。
また、キッチンの後ろは壁一面の収納になっていますが、こちらも引き戸を閉めればすっきりと目隠しすることができます。冷蔵庫まで隠せるので、全て閉めるととてもシンプルな空間になります。
次に洗面脱衣室とトイレを見てみましょう。トイレは1.3畳と少し広めにしてカウンターを造作。ナチュラルカラーのタイルがリラックスさせてくれます。
洗面脱衣室は3.5畳と広めの空間。クローゼットも設けているので、下着やタオルなどを収納するのにも便利です。
引き戸の内側は姿見になっています。姿見としての機能はもちろん、これにより空間が広く感じられます。
1階には4.5畳の和室も設けられています。こちらは天井まで高さがある吉村障子(建築家の吉村順三氏がデザインした、桟の太さが揃ったモダンな障子)がすっきりとした空間をつくり出しています。ちょっと横になりたい時や、ゲストが宿泊する時に重宝しそうな空間です。
2階は小屋裏まで一体の空間
次に階段を上がって2階へ行ってみましょう。
2階の中央は広い多目的ホールになっています。中央部分がもっとも天井高が高くなるので、こちらのホールはとても開放的な場所です。正面には水平方向に窓が連なっているのが見えます。
「窓の高さをそろえることで線がシンプルになり、きれいな空間ができあがります」と宮路さん。窓だけでなく、建具の高さも統一されています。2階の建具は全て高さ1,800mmで統一されているそうで、この程度の高さの建具だと、オーダーメードで作ってもコストを抑えられるのだとか。
寝室は建具を全て開放すると、実に開放的。
閉じれば落ち着いた個室に変わります。
吹き抜けを挟んだ逆サイドには4.5畳の子ども部屋が2つありますが、吹き抜けに面した部屋は壁をつくらずに多目的なホールにしています。本や漫画を並べるのにちょうどいい造作の棚があり、ハンモックを付ける金具もあるので、ここでゆらゆらと揺れながら読書を楽しむことができます。
ちなみに上部はロフトです。将来中央に壁を付けて仕切れば、2つのベッドスペースができあがります。
家の中を一通り見てきましたが、外観から感じるコンパクトなイメージとは異なり、実に広く、心地よい空間がいくつも用意され、それぞれの居場所が有機的に繋がるような住まいとなっています。
「この住まいは階高を抑えることが重要なポイントになっていますが、それは建材や建具のコストを抑えることに繋がっており、その分を断熱性能の向上や素材へのこだわりに充てています。見た目のインテリアのデザインだけでなく、躯体でデザインを考えることが大切で、それはコスト効率のいい家づくりにも繋がります」と宮路さん。
素朴でシンプルな美しさが特徴のCraftの家づくりですが、そこには実に様々な意図が隠されています。
また、建物はシンプルに、家具でトレンドを楽しむ。これが宮路さんの空間づくりの考え方なのだそう。
建物がシンプルだからこそ、どんな家族の暮らしにもフィットしそうですね。
この住宅は現在販売中。五泉市で住宅購入を考えている方、五泉市に住んでみようかと考えている方は内見をしてみてはいかがでしょうか?
土地面積:217.76㎡(65.87坪)
延床面積:106.48㎡(32.21坪) 1階60.11㎡ 2階43.37㎡
住所:五泉市赤海2丁目(フラワータウン内)
竣工年月:2017年1月
本物件の売買情報は有限会社TMCのHPをご覧ください。
取材協力 暮らしのデザインCraft
新潟市中央区山二ツ5-6-11 1F
025-385-7538
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