自然素材と職人技が融合した住まい
今回取材に訪れたのは、1月中旬から村上市で完成見学会を開催している住まい。
その家は村上市中心部に程近い場所にありながら、豊かな自然に囲まれています。
上品でモダンな旅館のような雰囲気も相まって、なんとも居心地のいい空間が完成していました。
こちらは自然素材を使い、職人の技術をふんだんに取り入れた家づくりを行うノモトホームズ(新潟市東区竹尾)が手掛けた家ですが、2018年1月13日(土)~2月25日(日)という少し長い期間、完成見学会を行っています。
今回案内して下さったのは、この住まいの実施設計を担当したノモトホームズの竹村泰彦さん。
自然素材あふれるこちらの住まいと同じくらい、竹村さんからも優しいオーラがあふれています。
では、どんな住まいなのかさっそく見ていきましょう。
まず外観ですが、切妻屋根に黒い板塀が印象的な佇まいとなっています。深い軒に伝統的な日本の美しさが現れています。
「ここ城下町村上の名所『黒塀通り』と同じ黒い塀にすることで、村上の地域性も表現しています」と竹村さん。
また、ポーチの壁は杉板を焼くことで表面を炭化させる「焼き杉」仕上げ。
これは見た目の美しさだけでなく、耐久性を高める効果もあります。こちらの杉を焼く作業は施主さんも参加して行ったのだそうです。
独特の黒光りした焼き杉の質感は、自然素材ならではの深い味わいを感じさせます。
住まいの中心はダイニング&キッチン
次に玄関ドアを開けて、光を抑えた土間に踏み込み、さらに右手にある引き戸を開きます。
そこで視界が一気にぱっと開け、開放的な空間が目に飛び込んできます。
頭上は2階の天井までの吹き抜けで、高窓越しに裏山の木々が眺められます。
静かな空間に、ストーブの中で燃える薪のパチパチという音だけが聞こえてきます。
土間から正面に見えるのはケヤキの一枚板のダイニングテーブルとキッチン。
キッチン側が少し下がっているので、土間とキッチンでちょうど目線の高さが揃います。
床に腰を掛けると掘りごたつのようになり、楽に座ることができるのはもちろん、高さが抑えられているために空間が広く感じられます。
このダイニングキッチンが住まいの中心であり、小さな割烹旅館の食事処のような品の良さを感じさせます。
床と天井に使われているのは秋田産の杉。壁には漆喰が塗られています。
窓の目隠しには、カーテンではなく障子が使われていますが、家具や建具、キッチンも全てノモトホームズのオリジナルなのだとか。
大工職人、左官職人、建具職人、空間の全てがさまざまな職人の手仕事によりつくり上げられています。
また、明るくなり過ぎない照明計画もこの住まいのポイントです。「明りだまりをつくるように照明を配しています。杉板張りの天井をすっきりときれいに見せるために、天井に照明を多く付けない工夫もしています」(竹村さん)。
自然が身近に感じられる和室と浴室
リビングの奥に進むと和室がありますが、コーナー2面に掃き出し窓が設けられています。
実はこの2面の窓は戸袋に引き込めるので、窓を全開にすると内と外とが一体の空間になります。
外にはウッドデッキが伸びており、デッキと一体に造られたベンチに腰を掛けて、夏に夕涼みをしながらビールを飲むのもまた楽しそうです。
和室とは逆サイドへと進むと、奥の突き当たりが脱衣室と浴室になっています。
脱衣室は南側からの光が入る広めの空間で、物干しスペースも兼ねています。
その隣には、檜の板で仕上げられた浴室があります。湯船に浸かるとちょうど目の高さに窓があり、坪庭にあるモミジを眺めることができます。季節の移ろいを感じながら過ごす入浴時間。温泉旅館で過ごすような非日常的な時間が、この住まいでは日常になります。
接着剤を使わない家づくり
次に2階へ上がります。
2階の床と天井も杉板仕上げ。壁は1階と同様に漆喰が塗られています。
2階のホールは船底天井。7寸の太い柱がいっそう高さを感じさせます。
ちなみにこの柱は村上市山北地域の木を施主様立ち会いのもと伐り出してきた木材なのだそうです。
ただ完成を持つのではなく、つくる過程を共有しながら進めた家づくり。それにより、ご家族にとっていっそう思い入れの深い家になっていることが想像できます。
吹き抜けに目をやると、薪ストーブの煙突が伸びているのが見えます。
枠がほとんど目立たない高窓はガラスの存在感が抑えられ、まるでそのまま外に繋がっているかのような錯覚に陥ります。
寝室はクローゼットの中まで杉板で仕上げる徹底ぶり。建具の表面には和紙が貼られています。
子ども部屋は壁・天井・床の全てに秋田杉を使用。建具も杉で造られています。
1階も2階も自然素材で満たされたこの住まいは、新築住宅特有の接着剤のにおいがなく、代わりに木の清々しい香りが漂っています。
ノモトホームズの家は、下地用の合板(複数の板を接着剤で張り合わせた板)を使わないことや、ホルムアルデヒドを発生させる接着剤を使わないことなど、健康への配慮が徹底されているのが特徴です。
開放的なつくりで広々とした住まいですが、実は延床面積は28坪とコンパクト。
しかしながら細かく間仕切りしていないため、大人数で集まっても窮屈さを感じることなく過ごせそうです。
冬はストーブに薪をくべながら雪景色を眺め、春や秋は窓を開け放って心地よい風を取り込みながら過ごす。
夏はデッキでお酒を飲んだりバーベキューをしたり。四季折々の暮らしの楽しみ方がイメージできる住まいです。
家は人生の多くの時間を過ごす場所。もちろん、こだわりを持たずに「家はただ住めればそれでいい」という考え方もありますが、そこで過ごす一瞬一瞬が心地よく充実した時間になる家で暮らすことができたら、人生はいっそう満足できるものになりそうです。
ただそこに居るだけで心地いい旅館のような住まい。ぜひこの機会に体感してみてはいかがでしょうか?
取材協力:ノモトホームズ
見学会開催期間:2018年1月13日(土)~2月25日(日)
※予約制見学会のため、025-270-4400(ノモトホームズ)に連絡を入れて頂くか、こちらのページよりお申し込みください。
コメント