卓上に置いておきたくなる、ステンレス製の生活小物
ステンレス製の生活雑貨というと、ボウルや鍋、ヤカン、包丁などの、機能性重視のキッチン製品が思い浮かぶのではないでしょうか?機能重視でなんとなく無骨だったり、しっかりデザインされたものもクールさを全面に打ち出したものが多く、「かわいい」とは縁遠い製品のように思います。しかし、今回取材で見せて頂いたものは、ステンレス製で非常に実用的な製品であるにも関わらず、柔らかなフォルムと木の組み合わせにより温かみにあふれています。下の写真を見て、なんの道具か想像できますでしょうか?
なんと、これは「栓抜き」なのだそうです。上半分には無垢材を使い、下半分はステンレスでできたこの製品。その名も「macaron(マカロン)」。普通の栓抜きのような無骨さはまったく感じさせません。インテリア小物として卓上やリビングに置いておきたくなりますね。
この栓抜きを手掛けたのは、金属加工業・江口広哲さんと椅子職人・伊藤竜一さんの二人からなるデザインユニット「monge(モンジュ)」。今回、江口さんからお話をうかがいました。
異業種のクリエイターユニットがつくる、新しい生活雑貨
「mongeは伊藤から誘われて2011年にスタートした活動で、最初のメンバーは4人で部活のようなノリで始めたんです。椅子職人の伊藤のほかに、指物師、溶接工と、ステンレス加工の自分がいて、それぞれの技術を組み合わせた椅子を作るところから始まりました。ものづくり全般が好きなので、コラボレーションによってステンレス以外の製品や作品を作れることも魅力でした」(江口さん)。当初は家具等の制作をしていたmongeでしたが、その後、販売が難しい家具から生活雑貨へと方向転換をします。「小物の方が扱ってもらいやすく、販売もしやすい」と江口さん。現在、こちらの「macaron」は加茂市のイシモクショールームや十日町市のまつだい農舞台などのほか、上海のオークラガーデンホテルのギフトショップや、ドイツ・ミュンヘンのインテリアショップなどで取り扱われているそうです。
ほかにも地場の技術を生かしたユニークな製品の開発を続けるmonge。二人の専門性を生かしながら、新潟県内の染め物作家や蒔絵師、ガラス作家といったさまざまなクリエイターとコラボレーションをすることで、デザインの可能性を広げています。最新のプロジェクトの一つが、眼鏡の製造で有名な福井県鯖江市のメーカーとコラボレーションした名刺入れ。眼鏡フレームに使われるセルロースアセテートとステンレスが握手をしているように重なり合うデザインで、曲線のフォルムにすることで、名刺を一枚一枚滑り出させることができます。これらの製品は、毎年パリやフランクフルトで行われる見本市に燕三条ブランドや百年物語ブランドとして出品もされています。
mongeの二人が行っているのは、このようなプロダクトデザインだけでなく、インスタレーションなどの作家活動にも及びます。先週3月7日(土)・8日(日)に十日町市で行われた「雪アートプロジェクト」でも、雪を使ったインスタレーション作品を制作。このような創作活動においては、「展示を行う環境を読み取りながら、作品のコンセプトを考えていくようにしています。例えば、この雪アートプロジェクトにおいては、雪の消音感や雪の怖さといったものも表現したいと思っています」(江口さん)。
monge製品のベースとなっている、ステンレス加工技術
そもそも江口さんの本業である金属加工会社は、ステンレス製のメジャーカップやオイルポットといった、実用的な製品を製造するメーカー。一般家庭だけではなく、調理のプロにも愛用される製品を世に送り出しています。その中には、スプリングが入った油引き(柄を押したときだけ、綿糸に油を浸せる)や、入れ子状に収納ができるメジャーカップ(省スペースに収納可能)があり、シンプルで使い勝手のいいこれらの製品はロングセラーとなっています。
工場の中は重厚なプレス機械が並び、二次元のステンレス板がここでいくつもの工程を経て三次元の製品へと変化していきます。良質なステンレス製品を生み出す技術をベースとしながら、新しい発想やデザインのインテリア雑貨をつくり出すmonge。
近年、暮らしで使う雑貨の一つ一つにも、品質だけでなく独自のストーリーを求める動きが広がっています。燕三条の地域性と独創的なアイデアが詰まったmonge製品は、まさにそんなニーズに合った新しい動きと言えそうです。今後どんな製品が生み出されるのかにも注目したいですね。
取材協力:monge(モンジュ) 公式HP、Facebookページ
参考HP:Starry(monge製品を扱うオンラインショップ)
(ハウジングこまち編集部 鈴木)
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