滞在型アトリエに生まれ変わった、三条市の築80年超の町屋

滞在型アトリエに生まれ変わった、三条市の築80年超の町屋


三条市中心部の空き家リノベーション

人口減少時代の今、新潟県の空き家率は13%を超えています。人口約10万人を擁す三条市においても、中心市街地の空き家の増加は社会問題となっています。三条市ではそんな中心市街地活性化のためのさまざまな取り組みが実践されていますが、3月1日にオープンした、「Craftsmen’s Inn KAJI」もその取り組みの一つ。この建物は、かつて文房具店だった築80年の町屋ですが、三条市主導で、アトリエ付き滞在施設にリノベーションされ、民間企業で運営されることになりました。

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昔ながらの街並みの中に立つ「Craftsmen’s Inn KAJI」

この「Craftsmen’s Inn KAJI」を運営しているのは、合同会社燕三条スタイルの代表・小山雅由さん。昨年秋に、三条市内の空き店舗をリノベーションし、クリエイター向けのシェアスペース&ライブラリー「燕三条トライク」を手掛けた実績を持っています。そんな小山さんにお話をうかがいました。

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合同会社燕三条スタイル代表・小山雅由さん

移住促進をも見据えた1棟貸しの賃貸

「実はここは旅館やホテルではなく、1日単位から1棟貸しする賃貸物件なんですよ」と小山さん。利用者は賃貸借契約を結び、1日単位から借りることができる仕組みなのだそうです。「作家さんが滞在しながら創作活動ができるようにアトリエを設けています。それに、このエリアは昔から鍛冶職人が集まっていた歴史があり、いい道具が集まる場所です。ここに置いてある大工道具を使って、三条で創作をしながら滞在してほしいですね」(小山さん)。ただ、細かい制約は設けておらず、例えば玄関の土間スペースをショップやギャラリーとして使うなど、借り主は建物を自由に使うことができるそうです。

「江戸時代、有名な彫物師の石川雲蝶が三条にいました。でも彼は元はよそ者で、いい道具とうまい酒、美味しいごはんが食べられる三条が気に入って移り住んだと言われています。このKAJIにおいても、気軽に滞在して、三条で暮らすことを体験してもらいたいです」と小山さん。

 

1階はアトリエスペース、2階は寝室

では、気になるこの町屋の中を見てみましょう。まず入り口を入ったところは約12畳ほどの土間スペース。ここがアトリエとして利用できる空間です。棚には各種大工道具がずらりと並び、利用者はこれらの道具を創作活動に使うことができます。その奥にあるのは、8畳の和室。建具はアクリルガラスを取り付け、ホワイトボードのように使うことができます。また、ここでの活動が外からよく見えるようにして、訪れる人との交流を促します。

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KAJIの平面図。(公式HPより)

1階の奥には、キッチンや浴室、洗面スペース、トイレなどの水回りが。大きく手を加えるのではなく、修復が不要な箇所はそのまま残すことで建物の持ち味を生かしながら、修繕コストも抑えています。

2階には2つの寝室があるほか、吹き抜け越しに下の和室を見下ろすことができます。 傷んでいた壁は、塗り壁のワークショップを行うことで市民に参加してもらいながら修復をしたそうです。

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土間スペースの壁一面に大工道具が並ぶ。

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土間から見る和室。

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通り土間の奥へと伸びる廊下。上部は吹き抜けで、開放的なつくり。

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8畳の和室から土間を眺める。

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建具のアクリルガラスは、ホワイトボード代わり。

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キッチン

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洗面スペース

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浴室

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2階廊下より寝室を眺める。

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2階の通りに面した寝室。

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寝室から1階の和室を見下ろせる。

まちづくりにおけるリノベーションでは、建物そのものに手を加えることよりも、空間の概念をイノベーション(革新)することが重要とも言われています。商店として成り立たなくなった場所を、再び商店とするのではなく、全く違った用途へと転換することで、新たな価値を持つ空間にしています。

また、1日単位から住めるというのは、「市街地の古い建物で暮らしてみたい」という人が、リスクを負わずにその生活を試せる場でもあります。ここでさまざまなイベントや交流が生まれるだけでなく、街中での暮らしに目を向けるきっかけにもなりそうです。

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建物正面に付けられた「KAJI」のロゴマーク。物や人が集まり、新たな物を生み出して拡散していく様子をデザインしている。

取材協力:Craftsmen’s Inn KAJI

(ハウジングこまち編集部 鈴木)

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