※本記事はリフォームKomachi Vol.9(2022/8/25発行)の巻頭特集『人生を変えるリノベーション』掲載記事です。
玄関の概念を変え、誰もが入りやすい家に
無垢フローリングの製造・販売会社を営む遠藤大樹さんは大阪出身。
大学卒業後は東京の木材専門商社で働いていたが、子育てしやすい環境を求めて2017年に奥様の実家がある新潟へ移住した。それと同時に、新潟市沼垂で床材店を起業した。
「新潟に来てアパートで暮らしていましたが、不動産サイトでこの中古住宅を見つけたんです。僕は仕事でクセのある床材を扱っています。この家も線路脇の角地というクセのある立地。相性がいいなと思ったんです」(遠藤さん)。
奥の2階建て部分が1965年に建てられたもので、手前の平屋部分が1995年に増築されたもの。
奥の1階部分の約15畳をショールーム兼オフィスとして活用し、それ以外を5人家族で暮らす住宅に改築することにした。
間取りは遠藤さんが自ら考案しラフ図を作成。それを大工さんに渡してCADで図面化してもらったという。
「誰もが入りやすい家にしたかった」と遠藤さん。そのコンセプトは開放的な玄関に現れている。
かつての和室の窓部分を利用した玄関の入口は、視線を遮るドアではなく透明なガラス戸を採用。
それゆえ、アプローチを歩いて進んで行くと、玄関土間内に置かれたイタリアのスクーター「ベスパ」が最初に目に入る。
そして入口前に立てば、そこから玄関と一体になったリビング全体を見渡せる。
大らかに仕上げられた、飾らないリノベーション
細かい木材を市松模様のように張った床は、パーケットと呼ばれる寄せ木のフローリング。
遠藤さんが考案したチークの床材で、インドネシアのパートナー工場に製造委託してつくり上げたものだ。
丸太を無駄なく使い切ることを目的に開発した端材の寄せ木だが、それが独創的で味わいのある意匠になっているのが面白い。
将来床材を取り外して再び使えるように、接着剤は使用せず、フィニッシュネイルという釘だけで留めているところも遠藤さんのこだわりだ。
リビングの中央に敷かれているのは、トルクメン族の赤いヴィンテージの絨毯。その周りには椅子が無造作に置かれている。
「うちにはテレビがないんですよ」と遠藤さん。そう聞いて室内を見渡すと、そもそもテレビを置くべき場所が見つからない。
ゲストハウスのラウンジのようなくつろいだ空気感は、大型化し壁の大部分を占有するようになったテレビがないことも関係しているかもしれない。
また、内装の全てを新しくするのではなく、使える既存の建具をそのまま活用しているのも特徴だ。
数十年を経て少し傷んだ建具が違和感なくなじむ空間。それもまた、遠藤邸が持つ大らかさである。
「この家は木がどう経年変化をしていくかを見る実験の場でもあるんです」と遠藤さん。
日々木に触れながら、木が持つ可能性や新たな用途を考えながら暮らしている。
【DATA】
新潟市 遠藤邸
家族構成/夫婦+子ども3人
種別/戸建て(築57年)
構造/木造軸組工法
延床面積/100.00㎡(30.25坪)
リフォーム面積/100.00㎡(30.25坪)
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