スクラップ&ビルド型の日本の住宅
約20年で資産価値がほぼゼロになる日本の木造住宅。それゆえに中古住宅の流通シェアも約13.5%と低く、その割合は欧米諸国のわずか1/6程度と言われています。また、短いスパンで建て替えが行われる日本の住宅は「スクラップ&ビルド型」と揶揄されることもしばしば。
しかしながら、解体されゆく民家に価値を見出し、そこに新たな価値を付加して再生させようと考えている人もいます。古民家再生を手がける新潟癒し空間工房(新潟市北区)の渡邉哲次さんはその一人。古民家や蔵など、建物によっては築100年超の住宅でも、快適な現代の暮らしができるように改修することを得意としています。そんな渡邉さんは、古建具や古材の収集も積極的に行い、保存・販売を行っているそうです。
古いものがもつ歴史とストーリー
「築80~100年程度の古民家が解体される際に、再活用できる建具や建材を引き取りに行きます。特に窓ガラスは、今では珍しい結晶ガラスやダイヤガラスなどが使われていますので、ゴミにしてしまうのは非常にもったいないんです」(渡邉さん)。新潟市江南区大淵にある渡邉さんの倉庫には、そんな古建具が700枚以上も保管されています。
古いものにはすべてルーツがあり、ストーリーを持っていることが魅力と話す渡邉さん。「例えば梁や床板にしても、この部材はどこの町の有名な商家で使われていたもので…、などと人に説明をすることができますよね」(渡邉さん)。新潟市から、村上や出雲崎まで解体する民家へと足を延ばすこともあるそうです。そんな渡邉さんが収集した古建具や建材を求めて、首都圏から買い求めに来るお客さんも少なくないそうです。
古建具をリメイクし、新たな価値を吹き込む
今後、「収集した古建具をそのまま販売をするのではなく、独自の加工を施すことで、現代の住宅に合うようにしたい」と話す渡邉さん。例えばガラスの入った建具は、ガラス部分とその周りの枠だけにカットし、ガラスに色を入れることでステンドグラス調にしたり、木枠を着色することで、全く異なる印象に仕上げたり。「取り壊してゴミにするのは簡単なことです。逆に古い建物や建材を再生させるのはとても手間がかかります。それでも、そこに価値を感じているお客さんがいますし、そんな要望に応えていきたいですね」(渡邉さん)。
新しいピカピカの素材と共にスタートする暮らしも魅力的ですが、ストーリーのある古材を暮らしに取り入れるというのも同じくらいに魅力的なことだと思います。人口減少時代に入り、ストック住宅の活用がますます注目されています。古材の再活用という選択にも注目していきたいですね。
取材協力:新潟癒し空間工房
(ハウジングこまち編集部 鈴木)
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