空き家の活用やリノベーションがますます注目を集めていますが、新潟県では事例が少ない、倉庫を住宅にリノベーションしたお宅を見学してきました。手掛けたのは三条市のサトウ工務店。代表の佐藤高志さんにお話をうかがいました。
「お施主さんは、新築ではなく中古物件を購入してリフォームをするという手段を考えていらっしゃいました。立地条件も良かったこの倉庫をお施主さんの方で見つけてきて、相談を受けたことが始まりでしたね」(佐藤さん)。下の写真が工事前の建物です。実に倉庫らしい佇まいを見せる倉庫です。そして、内部は鉄骨の構造がむき出しになった簡素な空間。こちらも実に倉庫らしい空間です。
「鉄骨造のため構造は頑丈にできています。コストを抑えるためにも、なるべく使えるものはそのまま残すことにしました」と佐藤さん。こちらが完成した内部です。
細かい間仕切りをせずに、倉庫の大空間を生かした2階リビングは合計36畳もの広さがあります。天井部分はかつての倉庫を踏襲しており、垂直方向へも広がりを感じさせます。リビング部分の床にはパイン材を張り、ダイニングキッチン部分は白の塩ビシートで仕上げています。「もともと開口部が小さめなのですが、室内が暗くならないように白を使って光が回るようにしています」(佐藤さん)。空間は実にシンプルですが、西側の壁に大容量の収納を備えるなど機能的な設計に。中央に見える階段は、もともと備わっていた鉄製の階段を黒く着色し、白をベースとした空間になじませ、そこにはワイドな造作のデスクが接合されています。
「倉庫を改築して住む」というのはとてもワクワクする響きですが、熱伝導率が高い鉄骨むき出しの建物を住宅にするには、木造住宅のリフォームとは違う苦労があったと言います。「壁の断熱だけだと鉄骨の柱から熱が伝わってきてしまいますので、鉄骨をくるむ断熱材も入れており、屋根には外断熱と内断熱の両方を使って断熱性能を高めています。そして、元が倉庫なので新たに水回り工事をする必要もありました」(佐藤さん)。断熱改修や水回り工事に大きな費用が掛かった分、コストを抑えるためにもシンプルな間取りが求められました。
1階は主寝室と収納のほかは、トイレ・洗面室・浴室などの水回りのみ。2階は36畳のリビングと、子ども部屋、トイレのみ。細かい間仕切りがほとんどないため、とても開放的で自由度の高い空間となっています。
実はこのリフォームに限らず、佐藤さんが手掛ける住宅は非常にシンプルにつくられています。「あまりデザインをしていないような住宅を心掛けています。それに、シンプルな間取りの方が家族の成長にも対応しやすく、構造的にも合理的です。シンプル過ぎて、基礎工事をする職人さんにビックリされることもありますね(笑)」(佐藤さん)。
倉庫が持つ大空間や無骨さを生かしたシンプルなこちらの住宅。建物は土地代程度で、小規模な住宅を新築するのと同じくらいの費用でリノベーションが実現できたそうです。元の建物のクセを引き継げるのがリノベーションの特徴ですが、倉庫の特徴を生かした住宅は、ここでしか得ることができない特別な経験をもたらしてくれそうです。
住宅購入の際に、新築か中古住宅かという二者択一以外にも目を向ければ、そこにはもっと楽しい人生の時間が待っているかもしれませんね!
取材協力:株式会社 サトウ工務店
(ハウジングこまち編集部 鈴木)
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