※本記事はリフォームKomachi Vol.9(2022/8/25発行)の巻頭特集『人生を変えるリノベーション』掲載記事です。
機能と意匠を一新し、時代に適合した住まいに
間口7.3m、奥行32.4m。新潟市中央区の街なかにあるE邸は、先祖から受け継がれた南北に細長い土地に立っている。
Eさんご家族は築40年近いこの家を昨年改築し、分離型二世帯住宅にして新しい生活を始めた。
子世帯はEさんと奥様、娘さんの3人家族。1階の奥ではEさんの両親が2人で暮らしている。
玄関から別々に設けられており、それぞれの世帯がプライバシーを保ちながら生活できるのが特徴だ。
「この家は私の父が建てたもので、その後に父が増築を繰り返していたんです。私たち夫婦二人だけになり、はじめは自分たちが生活する部分だけリフォームすることを考えていました」とお父様。
そんな時、賃貸暮らしをしていた長男のEさんが二世帯で暮らすことを希望し、家全体をつくり変えるリノベーションに踏み切ったという。
隣家が迫る土地で自然光を採り入れるために、元々6畳程の中庭と、4.5畳程の坪庭が設けられていた。
2つの中庭を囲む鍵型の平面を活かしながら、新しい間取りの計画が進められたという。
また、建物右手には、屋根付きの通路が新設された。これにより、奥に設けられた親世帯用の玄関と駐車場の間を、雨雪の影響を受けずに行き来できるようになっている。
アオダモが伸びる中庭は、3世代が交わる広場
かつて大きな石や石灯籠が置かれていた中庭は、建物のデザインと調和するようにシンプルな土間コンクリートに刷新。
そこには新たに株立ちのアオダモが植えられた。
「その上はグレーチングを置いて、2階にバルコニーをつくって頂きました。観賞魚が好きで、バルコニーではビオトープとなる水草を育てています。妻はミニトマトやバジルなどの野菜を育てていますね」とEさん。
この中庭は、各部屋に光を届ける他に、子世帯と親世帯の間の緩衝地帯としての機能や、リビングと寝室を柔らかく区切る機能、さらにはビオトープや野菜を育てる場所にもなるなど、多くの機能を併せ持っている。
1階の親世帯の住居は、1本の動線で生活が完結するシンプルさを重視。
2階を中心とした子世帯は、モノトーンを基調とした空間に間接照明を組み合わせることでスタイリッシュな雰囲気をつくり出した。
窓の外を見れば通りの柳の木が風に揺れる様子が眺められ、逆方向を見れば、バルコニー越しに奥へと伸びる空間を感じられる。そんな開放感と奥行感も魅力だ。
先代から受け継いだ家を建て替えるのではなく、引き継ぐことを決めたEさん家族。
ライフスタイルに合った間取りや新しい意匠を採り入れることで、時代に適合した町屋に再生した。
「孫と一緒にごはんを食べたり、遊んだりすることが増えました」とご両親。
生活領域を分けつつも、いつでも行き来できるちょうどいい距離感が楽しい3世代の交流を生み出している。
【DATA】
新潟市 E邸
家族構成/夫婦+子ども1人+両親
種別/戸建て(築39年)
構造/木造軸組工法
延床面積/192.07㎡(57.97坪)
リフォーム面積/192.07㎡(57.97坪)
(取材時期:2022年7月)
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